「如是我聞(にょぜがもん)」という言葉があります。仏教のお経の書き出しの言葉です。「かくのごとく私は聞きました」という意味で、仏教が口伝で伝えられてきた名残なのでしょう。
仏教に興味を持った私は「縁がわ仏教講座」でもおなじみの、サティ〜ずのキタオさんから、お釈迦さまが直接説かれたという「根本仏教」のお話を聞いて、聞きかじったことをここに記して行きたいと思います。
第六話 現象世界の根本法則(縁起)その1
仏教とは「縁起」の教えである
「縁起」という言葉は、私たちにとってなじみのある言葉です。「縁起がいい」とか、「縁起が悪い」とか、「縁起をかつぐ」とか、最近の若い人たちはあまり使わないかも知れませんが、なんとなくの意味はわかるような気がします。一般的な使われ方から考えると、どうも結果に関連する言葉のようです。いい結果が出たときは「縁起がいい」。悪い結果が出たときは「縁起が悪い」。いい結果を出したいときは「縁起をかつぐ」。結果を現象と言い換えると、「縁起」とは現象が生じる際の法則のようなものであることが推測されます。もともとは仏教の言葉である「縁起」が、一般の生活に深く浸透していることがわかります。
お釈迦さまが悟られた法(真理)を思い出してみましょう。一つ目がすべての現象(存在)が備えている「性質」でした。これは三大真理としてこれまで学んで来ました。二つ目がすべての現象(存在)にあてはまる「法則」です。三つ目がすべての現象(存在)に対する問題解決法でしたね。今回学ぶ「縁起」はすべての現象(存在)にあてはまる「法則」です。
キタオさんは「もし仏教とはどのような教えか、一言で教えてください」と問われたら、「仏教とは縁起の教えです」と答えれば正解です。と言いました。これまで学んで来た現象世界の性質である三大真理、諸行無常、一切皆苦、諸法無我も縁起の法則によって起こるのだそうです。すべてに当てはまる法則「縁起」。法則なので活用しなければ意味がありません。活用するためには理解しなければなりません。
というわけで、今回から「縁起」について二回にわたり学んで行きたいと思います。
「縁起」をどのように活用するのか?
縁起とは「因縁果報」のことです。
因=原因(主原因)
縁=条件(補助原因)
果=結果
報=後に残る影響
キタオさんによれば、「何かが生じるときには原因があるが、ただ一つの原因によって一つの結果が出てくるわけではない」のだそうです。「一因一果」ではなく「多因多果」です。たとえばおなかをこわす原因を考えてみると、ウイスキーを飲み過ぎたからというのは「一因一果」となりますが、ウイスキーを飲み過ぎてもおなかをこわさない時もあります。
よく考えてみると、おなかをこわすのは、「ウイスキーの飲み過ぎ」プラス「からだが弱っていた」時だとすると、ウイスキーの飲み過ぎという「因(主原因)」とからだが弱っているという「縁(補助原因)」が結びつきおなかをこわすという「果(結果)」が生じるのです。
なるほど、キタオさんの実生活が垣間見えるたとえ話、わかりやすいです。からだが弱っているときは、ウイスキーを飲み過ぎないようにするというのが「縁起」の活用の一つですね(^^)
キタオさんは話を続けます。「例えば人間関係で、相手が自分には理解できない行動をとることはよくあります。縁起の法則から、その行動の裏には必ず原因があることを知っていれば、その原因を知ることで相手を理解できます。相手が理解できれば許すことができ、許すことができれば世の中は楽しくなります。」
相手の行動も縁起によって生じているのですから、そこには必ず原因があるというわけですね。相手がなぜその行動を起こしたのか?という原因を知れば、その人のことを理解し共感することもできます。もし、相手の行動によって自分に苦が生じていたならば、その行動を許すことで自分の苦も消滅するかもしれませんし、その原因によって相手も苦しんでいるのなら、協力して問題を解決できるかもしれません。
キタオさんによれば、縁起の法則とは別名「縁生、縁滅」の教えとも言うそうです。これは、何かと何かが出会って生じることもあれば、何かと何かが出会って消滅することもある、という意味です。例えば「炭」と「火」が因縁で出会うと燃焼という結果が生じ、「炭」が消滅し「灰」が生じます。つまり何かを得たときは何かを失うのです。
仏教の生き方は「まぁ、いいか主義」?
キタオさんは、仏教の生き方は「まぁ、いいか主義」だと言います。何かを得るときは何かを失うのだから、100%満足するということはありません。不足があったときはそれを埋めようとするよりも「まぁ、いいか」と思った方が軽やかに生きていけるのかも知れませんね。
一切皆苦で学んだ通り、私たちは生まれたときから「苦」の海に投げ込まれたようなものです。「苦」とは思い通りにならないこと。そして次から次へと出てくるものです。だとすれば、「苦」の海にプカーっと浮かんで生きていくのが一番なのではないでしょうか。
ここまで、すべての現象(存在)にあてはまる「法則」としての「縁起」を学びました。次回も引き続き「縁起」について学んで行きたいと思いますので、お楽しみに…
最後に私がキタオさんから聞いた内容のメモを添付しますので、興味がある方は参照してください。
※画像をクリックすると大きなサイズで開きます。