縁がわの常連・主婦ユキコが、ママ友から寄せられた“今ならではの不安・不満”について、同じく常連のキタオにアドバイスを求める特別編・その5。
緊急事態宣言の影響で孫の子守時間が増えたH.T.さんは、娘の子どもの叱り方が気になり出して…。祖母として、母として、どう接したらいいか悩む彼女に、キタオは仏教の立場からどう答える!?
孫を感情的に怒る娘…子守時間が増え、心配も倍増
●H.T.さん(71歳)
私は今、夫と二人暮らしですが、娘夫婦が共働きのため、週に何度か孫のお世話をするために娘の家に通っています。孫は小学生と保育園生、さらに昨年末に3人目が生まれました。娘は現在育児休暇中ですが、小学校が休校になり、保育園も感染が心配だからと行かせておらず、新生児のお世話も大変なので、これまで以上に私が孫たちの子守に通うようになりました。すると、一緒の場で過ごす時間が増えたことで、娘の“子どもの叱り方”がとても気になるようになってきたのです。
遊びたい盛りの子どもたちが外にも行けず、家の中で暴れてしまうのは仕方のないことなのに、烈火のごとく怒り、「どこか私から見えないことろに行って!」とか、「あんたなんていない方がいい!」などと、子どもの人格を否定するような言葉を吐くこともあります。イライラするのも分かりますが、孫たちの心に影響しないか心配になってしまいます。
今のところ孫たちは明るく素直に育ってはいますし、私も行くたびに、家の中でいちご狩りをさせてみたり、バルコニーで食事をしてみたりと、孫たちが楽しめるようなイベントを企画したりしておりますが、これでいいのかな…と悩んでいます。
娘の母として、孫たちの祖母として、私はどのような心で接したらいいのか、教えていただきたいです。
子どもが明るく素直なら、子育ては順調
娘さんやお孫さんにどのような心で接したらいいのか、という問いに対して、仏教の答えは「慈悲の心で接してください」ということになります。そのために、まずは今の状況をありのままに見てみましょう。
ご相談には、娘さんのヒステリックな叱り方について「孫たちの心に影響しないか心配だ」とありますが、これはほとんど心配いりません。なぜなら、お孫さんたちが明るく素直に育っているからです。お釈迦さまは「過去の行為の善悪を知りたければ、現在を見よ」と言われています。”縁起=因縁果報”の法則からいくと、娘さんがたまに言い過ぎなくらい激しく怒ったとしても、その何十倍も日頃からたっぷりと愛情を注いでいるからこそ、お孫さんたちは安心して明るく育っているんですよ。
しかも、子育ての観点から申し上げて、親が叱るべき時に厳しく叱るというのは大切なことです。というのも、子育てで大切なことは”子どもをケガや病気から守る”ことと、もう一つ”善悪のけじめ(やって良い事と悪い事)をしっかり躾ける”ことだからです。
子どもの意見ばかりを尊重する甘やかしや、躾無用の行き過ぎた放任主義が大抵失敗するのは、この二つ目のポイントが抜け落ちるからなんですね。
私たち大人は自己中心な心を持ちつつも、それを我慢したりして何とか社会生活を営んでいます。しかし、子どもはそうではありません。特に赤ん坊の時は自己中心度200パーセント、自分の快不快以外は一切考えていません。朝だろうが夜中だろうが、やれオムツが濡れた、やれお腹が空いたといっては泣きわめき、母親を奴隷のようにこき使います。(笑)私から見れば「母親もよく嫌にならないもんだな」と思うのですが、そこは赤ん坊も心得たもので、たまにニコッと笑いかけたりする。それで母親はメロメロになり、疲れがスッと消えた気になって、また一日中赤ん坊にこき使われるわけですね。(笑)
このように、もともと自己中心の塊である赤ん坊が、社会ルールをわきまえた大人となるための土台は、幼少期の躾にあるんです。そういう意味では、娘さんがたまにブチ切れる姿を見て、お孫さんたちも「これはやっちゃまずいんだな」ということを徐々に理解していくと思いますよ。
パイプ役になりながら、慈悲のサポートを
最後に、あなたが果たすべき役割ですが、これはやはり娘さんとお孫さんたちのパイプ役でしょうね。たとえば、娘さんが怒ったときの勢いに任せて「あんたなんか生まなきゃよかった!」などと存在否定の言葉を吐いたとしたら、後で「あなたのママはああ言ったけれども、本当はあなたのことが大好きなんですよ。だから、ちゃんとママの言うことを聞こうね。」とフォローする。その一方で、娘さんもやさしくたしなめる。あるいは、お孫さんが娘さんに言いたくても言えないということがあったら、それとなく娘さんに伝える、といった具合です。
いずれにしても、娘さんは幼子三人を相手によく頑張っていらっしゃいますね。その結果、お孫さんたちは明るく素直にすくすくと育っている。これはまさしく、あなたの娘さんに対する躾が成功した証でもあります。日々喜びをかみしめながら、慈悲のサポートをしてあげてください。
☆次回もお楽しみに!