人生へのまなざし

真っ暗な空にこそ、星は輝く 第4回

大人になってからADHD(注意欠陥多動性障害)と診断された私が、子供の頃からの苦しい経験を振り返って見えてきた、さまざまなコトを綴ります。一人でも多くの方のお役に立てることを祈って。

母の厳しさ、仏様神様を感じた瞬間

両親が陸上部だったからか、運動が大好きで運動会はいつも一等賞でした。小学校から専門学校時代までリレーの選手に毎年選ばれていました。母親は最前列で「えりこー!!抜かせー!!」と応援してくれるんです。周りの親たちに白い目で見られても、そんなことは気にせず応援してくれるし、私は母が喜んでくれることが嬉しかった。運動は自分に自信が持てるものでした。

母は私をいつも応援してくれ、ADHDの特性と思われる面も個性と見てくれていましたが、その半面、とても厳しい人でした。「口で言ってわからなければ手だって出る」と母親からしょっちゅうゲンコツくらったりして、自分の居場所は毎週日曜日に行っていた仏教の教会くらいでした。

母親にとって初めての子が私で、きっと戸惑うこともあったと思いますが、自分の居場所がなければ私は非行に走っていたかもしれません。ただ、「パパが怒っている時はママは怒らないようにしたんだよ。二人で怒ったらダメだと思って。」と、考えながら躾をしてくれていたことを大人になってから教えてくれました。

ただ、当時の私は母親に少しでも喜ばれる子になりたくて、「反省ノート」を書いていました。それは、母親から怒られたことを忘れないようにメモして見返せるようにするためのノートでした。『冷蔵庫を開けっぱなしにしない』『パパが寝ている時は一言も喋らない。ひそひそ話もダメ。』『パパが寝ている時は水道の蛇口をひねったら音がジャーって出ないようにする』『門限は守る』『明日の準備をするのが先』『言われたことは守る』などです。

そんな私の中にも、母への反抗心が生まれ始めたある日、妹が蹴っ飛ばしてきたためやり返したところ、妹が泣き、母親から「今蹴っ飛ばしたの見たからな。この子に謝れ。」と言われ、その前に蹴られたことを話しましたが、一切聞いてもらえなかったことがありました。その妹は母親に気付かれないようにこっちをちらっと見て実は笑っていたんです。

その直後、「お前はこの紙をコンビニでコピーして来い!」と50円程渡され、おつかいでコピーをしに行ったことがあります。

その時、私は空を睨みつけながら「仏様神様っているんだよね? 本当にいるなら母親と妹の分、ちゃんと私にわかるように証明して見せてよ。今のも見てたんでしょ? わざと蹴っ飛ばした妹と、私のことを見ようとしない母親の分。」と声に出して呟きました。

でもこれが本当に驚きで、コピーの直後にコンビニで当たり付きの飴を買い、2連続で当たりが出たんです。もう、泣きながら空を見上げましたよ。「え、、、本当にいるんだ、、、。ちゃんと見ててね。」と、仏様神様を信じた瞬間でした。

だからなのか、悪いことをしようとする時、空を見上げて、見られている気がしたので、やめることが何度かありましたね。幼い頃の私にとって、自分の支えは仏様神様の存在というか気配のようなものでした。そうする他、自分を支える方法がなかったんだと思います。

その後教会で『自分が変われば相手が変わる』という言葉を耳にし、それが私にとっての法華経に触れた時でした。学校のいじめも家庭でのことも、自分さえ変わることができれば環境は変えられると信じ、今まで自分と向き合ってきました。

 

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ERIKO

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茨城県生まれ。幼い頃はおてんばで、木登りやかけっこをしては傷だらけの少女だった。
物心つく頃から人間関係で悩むようになり、自分を含め、あらゆる命がなぜその姿でこの世に誕生するのかを問うようになる。

23歳で看護師になるが、度重なるミスに上手く対処出来ず、うつ状態になる。
24歳でADHD(注意欠陥多動性障害)と診断を受け、治療薬を内服し始めると、ミスは激減。それまで苦手と感じていたあらゆる物事が徐々に解消され、人生が大きく変わっていく。
患者さんと接する中で、「私にしかわからない気持ちを、あなたは理解してくれる。あなたが担当で良かった。」と言われたのをきっかけに、自分自身のこれまでの人生を人の幸せのために役立てたいと思うようになる。

現在は看護師をしながら、東京都杉並区を中心に活動している『Let it be〜発達障害の子を持つ親の会〜』で、当事者としての思いを共有し、当事者だからわかる子供たちの気持ちを代弁している。

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