人生へのまなざし

人生100年時代を考えてみる

2016年末に発行された「LIFE SHIFT(ライフシフト)-100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)は、多くの人に読まれ、話題の本となりました。まさに高齢化社会の問題に直面している日本でも政府機関、ビジネスマンなどのあいだで様々な議論を呼んだのは記憶に新しいところです。

人々は、栄養状態の改善、医療技術の進化など、様々な要因から図らずも長生きしてしまう時代を迎えたのです。事実、過去200年間で寿命は延び続け、ちなみに日本では、2007年に生まれた子どもの半数は107歳よりも長く生きると予測され、計算すると2114年を超えて生きるということになります。

今の社会では、人生を80年くらいとする前提で3つのライフステージが組まれています。この考え方が、長年続いてきました。3つのステージとは、教育ステージ、仕事ステージ、引退(老後)ステージです。大体22歳くらいまでが教育、その後60〜65歳までが仕事、それ以降が老後ということになります。

ところが65歳で引退するとして、人生が80年であれば老後は15年ですが、100年とすると35年になります。30年以上も引退生活をしているわけにはいきません。だから、3つのステージではなく、もっと多様なマルチステージで人生を考えるべきだというのがこの本で考察されていることの大筋です。そのマルチステージについての詳しい説明はまたの機会に譲るとして、この本の中で最も共感したのは100年の人生を支える「無形資産」としての「人的ネットワーク」についてです。

著者のリンダ・グラットンさんは、この本の下敷きとなった「WORK SHIFT(ワークシフト)」という本の中で以下のように述べています。

これからやって来るのは 、矛盾に満ちた時代だ 。テクノロジ ーの進化とグロ ーバル化の進展により人と人の結びつきが強まる半面 、私たちはいま以上に時間に追われ 、孤独を味わうようになる 。そういう時代に意義を見いだせる職業生活を送るためには 、この矛盾を回避する方法を見つけなくてはならない 。

昔は人間関係や人的ネットワ ークが自然に形成されるのに任せておけば十分だったが 、今後は 、それでは十分でなくなる 。未来の世界の多くの側面がそうであるように 、意識的 ・主体的な選択と行動が不可欠になる 。

関心分野を共有する少人数のブレ ーン集団である 「ポッセ 」 、多様なアイデアの源となる 「ビッグアイデア ・クラウド 」 、そして 、安らぎと活力を与えてくれる現実世界の友人などで構成される 「自己再生のコミュニティ 」を築くために 、意識的に努力しなくてはならない 。強固な人間関係をはぐくむことができれば 、大きなエネルギ ーを得られる 。(WORK SHIFTより引用)

私の周りにも60歳に近づき、その後の働き方について悩んでいる人達が少なくありません。50代半ばで役職定年を迎え、60歳で定年。その後は再雇用契約で65歳くらいまでは働けるというライフコースは用意されているようですが、役職定年で下がった給与は再雇用契約で半減し、やっていることは今までと同じなのに、と不満を持つ知人も多く居ます。

それでもその先まで仕事をするというイメージを持てている人は少なく、それ故に孤独に陥るひとも増えてくるのではないかと思います。

その時、支えになるのはきっと、安らぎと活力を与えてくれる現実世界の友人などで構成される 「自己再生のコミュニティ 」なのではないかと考えています。

自分には幸いにも、在家仏教教団で学生の頃に知り合った仲間達が居ます。長年にわたり、年に数回は会って人生について語り合える仲間達です。ここまで、様々な人生の問題を乗りこえるときに支えてくれた仲間達がいるから、この先もこの仲間達の中で、自分を取り戻し、再生し、前向きになれる活力を得られるものと信じています。

皆さんは「自己再生コミュニティ」を持っていますか?
それを維持していく努力、行動をしていますか?
過去にそういうものを持っていても、コミュニティは放っておくと崩壊していきます。だから、このような仲間を大切にして行かなければならないと思うのです。

 

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ホッと家のこづかいさん

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一般の社会人。ずっとマーケティングの仕事をしてきました。
若い頃出会った「ほとけさまの教え」に感銘を受け、みんなが幸せになるためには、この考え方、生き方が広がることが大事だと思っています。
で、微力ながらも社会の役に立つ人間になるために奮闘中。

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