値千金という言葉は聞いたことがあると思います。でも千金の価値のあること、物に出会う瞬間はそう多くはないでしょう。
でも私は、数年前に、千金の価値を持つ「2000円」に出会うことができました。
それは八王子つばめ塾を始めて1年半が過ぎたころです。1期生の卒業生から連絡がありました。高校受験の際に使っていた参考書をつばめ塾に寄付したいとのことでした。
高校入学以来初めて会いましたが、元気そうにしていました。とはいえ、経済的に苦しい状態は変わらない感じでした。その子は母子家庭で、下にまだ弟と妹がいます。お母さんは病気が重く、働けたり働けなかったり。そんな中、彼女は高校に通いながらコンビニとガソリンスタンドでアルバイトをし、かなりの金額を家に入れていました。
参考書と一緒に手紙が入っていました。家に帰って読んでみました。「高校入試では、つばめ塾にお世話になりました。ありがとうございました!!参考書買うのに使ってください」と書いてあり、2000円が同封されていました。びっくりし、妻に見せました。
毎日、勉強とバイトに明け暮れる日々。大変な思いをしながら、貴重なお小遣いの中から2000円の寄付でした。その「重み」を思うと涙が溢れてきました。つばめ塾を作って1年半でこんないい子が育つなんて、、、思いもよらないことでした。「つばめ塾を作ってよかったね。」妻が呟きました。私も心からそう思えた瞬間でした。
その2000円と手紙は、事務所のパソコンの近くにいつも置いてあります。彼女の想いを忘れないために、使わずにとってあります。
彼女が寄付してくれた直後、つばめ塾が新聞に取り上げられ、あちこちから寄付が頂けるようになりました。金額だけで見れば、彼女の何倍、何十倍の額です。でも、その先頭を切ってくれたのは彼女の「千金に値する寄付」だったといつも思っているのです。彼女の「想い」が全国に広がったと思うのです。
八王子つばめ塾は、国や行政からの補助金、受託事業を一切受けずに運営してきました。
それは、人々の「善意」が集まらなければやる意味がないと思っているからです。「経済的に苦しい家庭の子どもたちに希望を持ってもらいたい、幸せになってもらいたい。」そういう願いで集まる寄付、支援物資。ボランティア講師の熱心な授業。
これからも「みんなの善意」を集めて、子どもたちの学習支援に努力を重ねていきます。