抗がん剤治療中、次のようなメールをいただきました。
(がん患者に)「頑張れ」というのはどうかという人もいるけど、私はそうは思いません。無理なときは、自然にできなくなるから。とにかく、とことん頑張れ。
「頑張れ」と言うのはどうかという人もいるけど、私はそう思いません。
はい!私もそうは思いません!!!!
よく言われます。がん患者に「頑張れ」という言葉は言ってはいけないとか、根拠のない励ましはタブーだとか。もちろん、患者さんのなかにはそう思う方がいるかもしれません。現実につらい思いをしたり、傷ついた人がいたりするからこそ、一般的な情報として流されているのだと思います。でも、私にとって、思いのこもった「頑張れ」がどれほど力を与えてくれたかしれません。
このメールを受け取ったとき、私は抗がん剤治療の副作用で、これまで経験したことのない倦怠感と吐き気に見舞われていました。現実には一週間から10日ほどで、こうした状態から脱するのですが、延々とこの状態が続くように思い、そんな不安がさらに身体的な苦痛を増幅させていました。そんな最中で届いた「頑張れ」のメッセージ。
子どもみたいに声をあげて泣きました。身も心もボロボロで、とても起きていられる状態ではないのに、そんな状態のままでも不思議と力がみなぎっていくような気がしました。
運動会でかけっこのスタートラインに立ったとき、「もう十分、練習したんだから頑張らなくてもいいんだよ」と励まされたら、なんだか力が抜けちゃいますよね。出せる力も出せなくなる。やっぱり「頑張れ〜」「負けるな〜」と、エールを送られるほうが、俄然、力がわいてきます。このメールの「頑張れ」は、「もっと頑張らないとだめだ」ではなく、「おまえなら頑張れる」というメッセージが込められているように感じました。
たとえ世間がタブーと言おうが、その人が、そのときの私に一番贈りたい、他の言葉に変換不可能な「頑張れ」。考えて考えて選んでくれたその言葉は、ちゃんと心に届きました。
治療中、たくさんの方から励ましのメールや手紙が届きました。なかには、「頑張れ」という言葉を使わないよう、迷いながら言葉を選んでくれて、結果的にぎこちなくなってしまうような、そんな心遣いに胸が熱くなる文面もありました。ただただ日常の出来事を綴って笑わせてくれる自虐ネタメールもありました。
言葉にのっかってくる思いは、どれも温かかった。思いのこもった言葉には、正しいも間違いもない——私はそう実感しています。