「如是我聞(にょぜがもん)」という言葉があります。仏教のお経の書き出しの言葉です。「かくのごとく私は聞きました」という意味で、仏教が口伝で伝えられてきた名残なのでしょう。
仏教に興味を持った私は「縁がわ仏教講座」でもおなじみの、サティ〜ずのキタオさんから、お釈迦さまが直接説かれたという「根本仏教」のお話を聞いて、聞きかじったことをここに記して行きたいと思います。
第七話 現象世界の根本法則(縁起)その2
「因」は何処にあるのか?
前回は全ての現象(存在)の根本法則である「縁起」を学びました。すべての現象(存在)が生じる時には、必ず原因があります。しかし、その原因はひとつではありません。主となる原因と補助的な原因が結びついて結果が生じるのです。それが前回教えていただいた「因縁果報」のことでしたね。今回はその続きをお届けしたいと思います。
因=原因(主原因)
縁=条件(補助原因)
果=結果
報=後に残る影響
キタオさんは縁起の教えを生活で活用する方法について話を続けます。「私たちの日常の悩みはいろいろありますが、大体『貧・病・争』に集約されます。つまり、『経済的な悩み』『病気や健康面での悩み』『人間関係に関する悩み』です。このような悩みによって私たちは苦しみます。縁起では「果」と「因」を同じ人に当てはめて解釈します。つまり、私が苦しんでいる、という結果の主な原因(=因)は私にあるのです。この場合相手は補助的原因(=縁)ということになります。」
なんかこれ、すごく大事なことを言われているような気がします。自分が悩んでいる主な原因は自分にある。認めたくないような気もしますが、でも多分本当の事なんだろうな、と思って聞いていると、キタオさんはお構いなく話を続けます。
「例えば、夫婦げんかで苦しんでいる状態を考えると、妻の苦の主原因は妻にあり、夫の苦の主原因は夫にあるのです。つまり、お互いに自業自得ということです。ところが実際には夫も妻も『自分が苦しんでいる原因は相手にある』と思いがちです。これでは被害者意識が強くなり、さらに苦しむことになります。因と果の主体者が別であるという勘違いによって、『悪いのはあの人でかわいそうなのは私』という思いが強くなります。つまり、自分の幸せは人任せで、いい人に出会わなければ幸せになれないということになってしまいます。」
キタオさんの例え話は、夫婦げんかが多いような気がしますが、それはさておき、自分の幸せや人生が「出会う人次第」なんていうのは自分の意志では幸せになれないということになってしまいます。やっぱり苦しんでいる結果は自分に原因があると思った方が、認めたくない気持ちがあっても、自分の人生を努力によって切り拓いていけるので、いいような気がする。などと思っていると、キタオさんは続けます…
「もちろん、幸せを感じた結果の原因は自分にあるのだから、自分自身をほめていいのです。しかし補助原因(縁)があったから幸せを感じられたのだから、縁に感謝することを忘れてはいけません。」
「因」は自分の中にあった
うまくいったら自分の手柄、失敗したら他人のせい。なんていう人にときおり出会います。自分もそんな考えに陥りかねないと感じるときもあります。でも、もし会社の上司がこんな人では、誰もついていく人はいなくなりますし、そんな人にはなりたくないとも思います。ほとけさまの教えは明快です。「いいことも悪いことも、その現象が生じるのは自分に大本の原因がある」と教えてくださっています。
すべての現象(存在)が生じる時には、必ず主原因と補助原因がある。それが縁起の教えです。では、「苦」を感じている人の「主な原因」はどこにあるのか?。その答えは、「その人の中」にあるということです。自分が苦を感じたとき、その主原因は自分にある、というのはものすごく納得しました。その原因を解消することで、私の感じる結果としての「苦」は解消するわけです。縁起という教えは、そのような自己の内省によって活かされるのかも知れません。
もうひとつ、例えば他人の悩みの相談にのることもあります。そんな時、その人を慰めようと思って、その悩みの原因をその人以外に探すことがたびたびあります。でも、その人の悩みの主となる原因はその人の中にあるわけですから、いくら原因を外に求めても、その人の悩みは解消しない、ということですね。本当にその人のことを思うなら、その人の中にある「主原因」を探す手伝いをすることが真の優しさかも知れません。そんなことを考えているとキタオさんの話はまだ続きます。
「それでは縁起をもっと詳しく解説するために『十如是』についてお話ししましょう…」
なんと、もっと詳しい解説があるのか。『十如是』とは一体…
というわけで、「縁起観」についてのお話は再び次回に続きます。お楽しみに…
最後に私がキタオさんから聞いた内容のメモを添付しますので、興味がある方は参照してください。
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