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〈番外編〉「新型コロナ・心の処方箋」その7

縁がわの常連・主婦ユキコが、ママ友から寄せられた“今ならではの不安・不満”について、同じく常連のキタオにアドバイスを求める特別編・その7。
夫の飲食店も自分のパートも、コロナ禍で収入が激減。子供たちの勉学にも影響が出るのでは…と不安に襲われるミセスに、キタオは仏教の立場からどう答える!?

 

経済苦から教育格差も…この先、どうしたらいい?

K.W.さん(46歳)
夫はオフィス街で小さな飲食店を経営していますが、コロナの影響で収入は激減。テイクアウトのお弁当を販売し始めましたが、リモートワークが増えてランチタイムも人の往来がほとんどなく、あまり売れていません。
私はレンタルDVDのお店でパートをしていますが、今は最低限の人員でやっているので、パートは一番にシフトからはずされ、ほぼ収入は無い状態です。子供は休校で家にいるので、食費も光熱費もこれまでよりずっと増えています。
そんな中、緊急事態宣言が延長になり、そろそろ家計も底がつきそうです。国からの助成金はあるけれど、緊急事態宣言が解除されてもすぐに売り上げが元に戻るとも思えず、安心はできません。
家にパソコンは1台しかなく、高校生の娘と、大学生の息子のweb授業の時間帯が被ると、どちらが使うかでひと悶着。片方は仕方なくスマホで受講していますが、板書が読みにくくて苦労しています。
でも、今のわが家にもう1台パソコンやタブレットを買ってあげる余裕はありません。環境を整えてあげられないことで、子供たちの学力が遅れてしまうのではと不安です。
感染の恐怖より、経済的な恐怖の方が膨らんでいる今日この頃。一体、どうすればいいのでしょうか?

 

人生とは幸せと不幸をより合わせた縄

新型コロナ禍から始まって、ご主人の商売や子供の教育などの不安が重なり、さぞやご心労のことでしょう。しかし、とりたてて恐怖に感じる必要はありません。なぜなら、あなたが今直面している問題は特別な事ではないからです。
仏教には”諸行無常”という教えがあります。「すべての現象は波のように変化し続けている」ということなのですが、私たちの人生でいえばどうでしょうか。それはまさに「禍福(かふく)はあざなえる縄のごとし」。何かを得たと思えば失い、失ったと思えば別のものを得たりする。商売をすれば儲けたり損したりは当たり前。そのほか名誉・不名誉、非難・称賛、有利・不利というように、幸せと不幸がより合わせた縄のように交互にやってくるのが人生です。それが普通のことなんですね。このことをまず理解してください。
では、そうした幸不幸の変化は何が原因で起こるのか。それは大きく分けて二つあります。一つ目は”自分の行為”(=主原因)。つまり「(慈悲の心で)善い事を、(智慧を使って)上手にやったかどうか」という事です。
ご主人の商売に例えてみましょう。お客さんに良い食材を使ったおいしい食事を、できるだけリーズナブルな値段で提供しようと考え(=善い事を)、そのために仕入れ先の開拓や周囲のリサーチ、経営管理のしくみづくりなどを周到にやる(=上手にやる)。この二つがそろえば、商売繁盛という幸福が訪れるわけですね。

 

いたずらに先行きを不安がる必要はない

ところが、そうやって順調な経営をしていても、突然商売が傾くこともあります。それは”環境変化(=補助原因)”のせいです。今回の新型コロナ禍のような出来事はもちろんのこと、競合店が出店したり人々の嗜好が変わったりして、客足が遠のくことがこれにあたります。
このように、私たちの人生は、自分自身の努力だけで幸不幸が決まるのではなく、周りの影響も受ける。すべての存在が関係し合いながら変化し、変化しながら関係し合っているからです。これを仏教では”縁起(=すべての現象は縁によって起こる)”といいます。
いずれにしても、禍福はあざなえる縄のごとしですから、いたずらに先行きを不安がる必要もありません。労を惜しまず智慧をしぼって対処すれば、必ず良き変化が訪れてきます。
ご主人の商売に関して言えば、まずは国や自治体が提供している補助金・助成金の制度を、徹底的に調べるとよいですね。次々と新しい制度が出ていますから、見落とさないように。もしご主人がお弁当の移動販売や宅配などを考えるなら、業態(売り方)を変える事業主向けの補助金制度を設定している自治体もあります。その他にもさまざまな制度があるはずですよ。こうして得た情報をもとに、今後の対策を練っていくとよいでしょう。それもできればご夫婦でね。
子供のパソコンが足りないという問題も同じで、まずはリサーチです。とりあえず息子さんに「激安のパソコンやタブレットを探して」と投げかけてみてください。パソコンなら新品でも3万円前後、タブレットなら1万円以内の製品をすぐに探してくるはずです。これくらいなら、しばらく晩ご飯のおかずを1、2品減らせば、なんとか買えるのではありませんか?(笑)
ともあれ、漠然とした不安は、さらなる不安を呼ぶものです。具体的に動いてみると、何がどう問題なのかが明らかになり、頭が整理されてくるんですね。
最後にひと言。次々と起きてくる現象には、コインの裏表のようにマイナスの面とプラスの面があります。新型コロナ禍も同様。生命の危険や経済的な大打撃をもたらす半面、得難い宝もまた与えてくれるはずです。それは、ご主人の経営再建を一緒に考える中で得られる、夫婦の固い絆かもしれません。たっぷりの時間によって深まる親子間の相互理解かもしれません。
新型コロナ禍によって何を得たのか、得られるのか。それを見つけようと前向きに心を切り替えてみてください。それができれば、あなたはすでに一つ目の宝を得たことになるのですよ。

☆次回もお楽しみに!

 

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サティ〜ず

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仏教が大好きな二人による、ホッと家オリジナルユニット。

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