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〈番外編〉「新型コロナ・心の処方箋」その6

縁がわの常連・主婦ユキコが、ママ友から寄せられた“今ならではの不安・不満”について、同じく常連のキタオにアドバイスを求める特別編・その6。
「自分たち夫婦の方が生活費を多く負担しているのだから、今回の特別給付金を夫の両親に満額渡すのは納得がいかない!」と息巻くミセス。キタオは仏教の立場からどう答える!?

 

図々しい同居の義父母に、10万円の給付金を渡したくない!

●M.T.さん(57歳)
主人の両親と同居しております。結婚してすぐ、主人の方が義父よりも少し多く費用を負担して二世帯住宅を建てました。でもその後は、「自分たちが半分出したから広い家に住めている」と事あるごとに恩着せがましく言われてきました。
光熱費や食費は多少入れてもらっていますが、旅行や外食のときは全て当然のように私たち持ちです。私が買い物に行くたびに、「ついでにあれとこれを買ってきて」と頼んできて、「毎月お金を入れてるんだから、そこからお願い」と平気で言います。正直、入れてもらっている金額よりもずっと多く私たち夫婦が負担している状態です。
今回、政府から国民全員に10万円の特別給付金が支給されることになりましたが、主人が世帯主になっているため、お義父さんもお義母さんも、発表直後から毎日のようにそのことを言ってきます。「まだ給付の申請書類は届かないのか?」「まさかもう入ってるのに隠してたりしないわよね?」「インターネットで申請した方が早いみたいだから、そうすれば?」…うるさくて本当にイヤになります。
正直、これまでかなりの額を二人に使っているし、食費やマスクや消毒アイテムなど、いつもより生活にお金もかかっているし。主人の夏のボーナスだってどうなるか分からないのだから、お義父さんお義母さんにまるまる渡すのは納得がいきません。主人に相談してみたら、「あれだけ楽しみにしてるんだし、あげないってわけにもいかないだろう」とのこと。でも、どうしても満額は渡したくない! どうしたら渡さずに済みますか?

 

自他を比べる心=マーナが、マウントの取り合いに発展

いろいろと大変ですね。(笑) 私が見るところ、あなたがカチンときているのは、ご両親のものの言い方でしょうか。他人行儀なうえに恩着せがましい。「自分たちが半分出したから広い家に住めている」だの「毎月お金を入れてるんだから…」などと事あるごとに言われたら、「私たちの出費の方が多いわよ!」と言いたくもなるでしょう。
最近、”マウントを取る”という言葉をよく聞きます。ご存じのように、さまざまな場面で互いに自分の優位性をアピールし、相手よりも上に立とうとすることです。あなたとご両親の間でも、日頃からマウントの取り合いが結構あるようですね。(笑)
もっとも、そうした状況に陥ることは誰にでもあることです。人間は集団を作って暮らす社会的動物ですから、家庭や職場の中で自分がどの立ち位置にいるかをとても気にします。そのため、常に自分と他人を比べて一喜一憂しているのです。こうした自他を比べる心の働きを仏教では”慢(マーナ)”といい、やっかいな煩悩(=悩みのもと)であるとして、離れることを勧めているんですね。具体的にご紹介すると、

①自分と他人を比べて、自分が上だと思いおごり高ぶる=高慢・驕慢(きょうまん)
②自分と他人を比べて、自分が下だと思い劣等感に落ち込む=卑下慢(ひげまん)
③自分と他人を比べて、同じだと思う(⇒嫉妬心の元凶)=同等慢(どうとうまん)

以上の三つです。つまり、自分が上だと思うと高慢な態度をとって相手の怒りを買い、自分が下だと思うと暗く落ち込む。落ち込みとは自分に対する怒りであり、それは同時に外へも向いています。また、自分と相手が同じだと思っていると、相手だけが評価されでもしたら嫉妬でムラムラと腹が立つ。このように、自他を比べる心から怒りが生じ、さまざまな争いへと発展していくわけです。

 

恩を着せる人の心を知り、感謝を伝える

こう見てくると、ご両親が口癖のように「お金を家に入れてる、入れてる」と言う理由も分かってきませんか? 極端な話ですが、たとえば、あなたがご両親に「お母さんたちのお陰で家計が助かるわ」と日頃からお礼を言っていたとしたら、それでもご両親は「お金を入れてる、入れてる」とおっしゃるでしょうか。
買い物の時も同じです。「あれ買ってきて」と言われたときに、こちらが渋々ではなく「は〜い!」と気持ちの良い返事を返せば、いちいち「毎月入れているお金から出して」とは言いませんよね。つまり、ご両親の心を察するに、顔には出さなくても家庭の中で何かしら肩身の狭い思いをしているか、軽んじられていると思っている可能性が高い。その反動として、自分たちの立場を回復するために、恩着せがましい言葉が出てくるのだと思います。そこのところを一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
もちろん、特別給付金の申請書類はまだかまだかと催促する姿に「うるさいなぁ」とイヤになるあなたの気持ちもよく分かります。でもまあ、私たちはお互いさまに凡夫(=悟っていない普通の人)ですからね。思わぬ臨時収入があるとなれば、楽しみで多少うき足立つのもしかたがないですよ。それよりも、私がなかなかパワフルだなと思うのは、あなた自身のご性格です。ご両親あてに支給される給付金なのに、どうしても満額は渡したくないというんですから、これはかなりの強者(つわもの)だ。(笑)
とはいえ、同時にあなたは竹を割ったような、気性のさっぱりとした裏表のないご性格でもあるようです。まあ試しに、機会を見つけてはご両親を誉めたりお礼を言うなどして、喜ばせてみてください。そうすれば遠からず、「特別給付金は満額あげてもいいかな」と思えるくらいに、ご両親の態度も好転すると思いますよ。

☆次回もお楽しみに!

 

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サティ〜ず

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仏教が大好きな二人による、ホッと家オリジナルユニット。

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