エッセー

ヤッシーのきまま見聞録⑫

私の名前はヤッシー。会社人生は終わった人ですが、第二の人生はこれから。会社の重しが取れた身軽さで見たこと、聞いたことをきまま(気まま、生まま)にお伝えします。きままなので、悪しからず不定期です。

「街歩きシリーズ2—神楽坂界隈」

都心にありながら、昔ながらの粋や歴史を感じさせてくれる街のひとつが神楽坂です。

学生時代はすぐ隣の早稲田に通っていましたが、貧乏学生には神楽坂は敷居が高くもっぱら飲む時は逆方向の高田馬場の安い飲み屋へ。ですから私にとっての神楽坂はどこかに憧れがありながらもちょっと遠い存在でした。社会人になってから、今では閉店してしまったしゃれた料理屋に先輩に連れて行ってもらってから神楽坂とのご縁ができました。先日久しぶりに懐かしい神楽坂を散策してきました。

その名の通り神楽坂自体が坂の街なのですが、界隈には庚嶺(ゆれい)坂や三年(念)坂、袖摺(そですり)坂、瓢箪坂、地蔵坂などの多くの坂があります。名前の由来などを記した案内を見ると、より一層興味を引き立てられます。そんな坂のひとつが赤城坂。神楽坂通りからはちょっと離れますが、営団地下鉄東西線の神楽坂駅近くで、赤城神社の脇です。

この神楽坂の地名の由来のひとつと言われる神楽堂があった赤城明神、赤城神社は約700年の歴史を持つ牛込総鎮守です。明治時代には坪内逍遥や島村抱月、松井須磨子などの文化人が出入りした芸術発祥の地でもある由緒ある神社ですが、2010年秋に本殿、幣殿、拝殿、神楽殿、境内などを大改修しました。地元出身の世界的に活躍する建築家・隈研吾氏の設計です。隈氏と言えばその後の活躍も目覚ましく、皆さんご存知の新国立競技場やJR高輪ゲートウェイ駅の設計も同氏の手になるものです。

「杜と坂」をイメージしたデザインは旧来の神社を超えた佇まいとなっています。社殿にはしゃれたカフェなどが併設され、横には定期借地権付きの分譲マンションが建っています。等価交換方式で建てたわが国でも他にあまり例のない神社ですが、「伝統と現代」を融合させた神楽坂ならではの建物です。毎月1回、休日には青空市場の「あかぎマルシェ」が境内で開催され、地元住民や観光客が集う憩いの場となっています。

大久保通りから外堀通りまで、神楽坂上から神楽坂下までの神楽坂通り(早稲田通り)が賑わいのあるメインストリートです。坂の途中には今では神楽坂には欠くことのできない、由緒ある毘沙門天(善國寺)があります。日蓮宗(法華宗)のお寺で、日本橋馬喰町で創設されたのは今から約400年前の桃山時代末。その後火災に遭い、麹町から現在の神楽坂に移ってきたのは約200年前だそうです。武家屋敷が並ぶだけだった界隈に人々の信仰を集める毘沙門天ができたことで、店も立ち並ぶ生活感溢れる街として発展していきました。明治初期には花街も形成され一段と華やかさが増します。明治・大正初期には泉鏡花や尾崎紅葉、北原白秋などの多くの文人、墨客が神楽坂を愛し交流したといいます。泉鏡花や北原白秋の住居跡も近くにあります。今でも初詣はもちろん、花まつりやお会式など日蓮宗にちなんだ行事の際は特に人出が多く賑わいます。

この神楽坂通り沿いにはファーストフードやコンビニ、喫茶など今時の店も多いのですが、その合間をぬうように、ところどころに和菓子屋や陶器店などもあり、どこか京都や鎌倉を彷彿させる粋や歴史を感じさせてくれます。日光・金谷ホテルのパンを売る店などもあります。

このメインストリートもいいのですが、もっと味わいのある神楽坂に浸れるのが脇の小道、横丁です。神楽坂通りの「大きくて旨い肉まん」がウリの「五十番」の角から軽子坂までの東西に延びる石畳が本多横丁です。江戸中期から明治初期まで、この辺りに旗本の本多家の屋敷があったことからこの名が付いています。道の両側、通り沿いには「神楽坂○○」と銘打ったしゃれた日本料理店や個性的な店が軒を連ね行き交う人々を誘います。私が何度か訪れたことのある「はじめの一っぽ」というニンニク料理専門店もこの通りの中ほどにあります。久しぶりに店の前を通るとランチのカレーの看板が掲げられていました。

「本多横丁は粋な小道へのはじまり」とのキャッチフレーズが話題を呼んだ時もありました。そんな街の案内を思い出しながら、途中を南側に入ると映画やテレビのロケでも使われる石畳の兵庫横丁や黒塀に囲まれた料亭が並ぶかくれんぼ横丁へと続きます。かつて花街があった頃の独特の雰囲気を今に伝えます。この横丁の料亭や日本料理店では1000円前後で気軽に美味しいランチを食べられるので人気があります。平日には年配の女性陣がグループでランチを楽しむ姿が数多く見られ、休日は家族連れや若者で賑わいます。

本多横丁の手前を入った路地に激安の居酒屋「竹子」があります。入口の外観は高級感が漂いますが店内は街中の居酒屋そのもの。何とビールが180円、ハイボール、サワーが150円という神楽坂にしては信じられない値段です。つまみ類も安く安心して飲める居酒屋です。

「竹子」の向かいがイタリアンの名店「アズーリ神楽坂」です。夜はコース料理が飲み放題付きで5000円ほど。ランチは1000円から。ビジネスマンのグループで賑わいます。

横丁や坂道沿いある店は数知れず。粋や歴史に浸りながら、いくら散策してもしきれない魅力的な街が神楽坂です。


追伸:ヤッシーが本の第2弾を出しました。「働く方・働く場改革 人と職場を活性化する笑談力・考動力 〜笑いをうむ19(いっきゅう)のワザ〜」(ビジネス教育出版社)。ご購読いただければ「笑いのコミュニケーション」と「考えて動く力」を磨くための一助となるはずです。

ヤッシー

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