「最近の若いもんは、…」というのは頑固親父の口癖ですが、このセリフ、古代エジプトの古文書にも書いてあったという都市伝説があるほど、いつの世代にも大人たちが若い人たちへの不満をあらわす言葉として登場してきます。例えば私の周辺にいる中堅以上のビジネスマンも、最近の新入社員の傾向として、社長をめざそうという人が年々減っていたり、役職に就きたくないという人が年々増えていたりするのを、やれ「最近の若いもんは覇気がない」だの、「最近の若いもんは草食系」だのと不満を口にしています。
最近の大人たちの若い人たちへの評価は、「若者の○○離れ」というように表現する事が多くなってきています。「DeNAトラベル」の調査によるとトップは「若者の車離れ」で33%、以下「新聞」「読書」「結婚」「おしゃれ」と続きます。日本市場で売上の伸びないもの、あるいは減少しているものが若者のせいにされている、という傾向が無きにしも非ずですが…
私はずっと、マーケティングの仕事をしてきましたが、これからの社会の動向を考えるとき、若い世代の価値観を参考にします。その中で(特にアメリカで)注目しているのが「ミレニアル世代」という1980年〜2000年に生まれた世代の価値観です。
ミレニアル世代とは西暦2000年代にアメリカで成人、あるいは社会人になる世代を指し、前述のように1980年〜2000年に生まれた人々のことを指します。社会に出るか出ないかの頃に、世界経済の転換点となった「リーマンショック」に遭遇し、とりわけ厳しい経済環境のあおりを受けた人たちで、若年期の失業率が高く、晩婚化や親との同居率がアメリカの歴史上最も高い世代と言われています。失業率を除けば、日本の若者も同じような傾向と言えます。
アメリカの大手広告代理店、ヤングアンドルビカムのジョン・ガーズマさんは、リーマンショック以降の消費傾向として以下の点に変化があったと指摘しています。
自分を飾るより→自分を賢くするためにお金を使う
ただ安く買うより→地域が潤うようにお金を使う
モノを手に入れるより→絆を強めるためにお金を使う
有名企業でなくても→信頼できる企業から買う
消費するだけでなく→自ら創造する人になる
その中で、ミレニアル世代に見られる価値観として大きく変わってきたのは
共有経済。所有から共有へ
家やクルマの所有にはあまり興味が無く、共有できればいいという考え方。リーマンショックを経てきた彼らは所有することのリスクや無駄を省くことが重要になっている。出世するよりワークライフバランス
出世したい人より出世したくない人の割合の方が多い世代。ワークライフバランスのとれた生活をする方が快適だと考えている。健康志向も高く、食事などに気を遣う人が多いのも大きな特徴。ソーシャルメディアでゆるいつながりを
デジタルネイティブ世代とも言われ、子供の頃からネットと親しんだ世代。Twitterやfacebook、Instagramなどのソーシャルメディアを活用し情報を収集するとともに、発信していく自己顕示欲の強さも特徴の一つ。社会貢献や自然保護を支持している
地球温暖化や環境破壊、自然破壊などに危機感を抱き、持続可能な社会の実現への興味も高くなっている。また、社会貢献のためのボランティアなどへの参加意欲も高い。
こういった価値観の変化は、自分の欲望を満たすことを優先して、厳しい経済環境を招いた上の世代に対するアンチテーゼと考える事もできます。でも、この価値観って実は仏さまの説かれる生き方にも通じているのではないでしょうか?もしかしたら、人間の考え方が、今の時代や環境に対応して進化してきているのではないでしょうか?
こんな変化を見ていると、彼らの価値観が広がった方が、いい世の中になるのではないかと思えてきます。
「最近の若いもん」の価値観は…実は我々大人世代に、今までの生き方を内省し、よりよい生き方をするためのヒントを与えてくれているのではないでしょうか?その意味で、もっと最近の若いもんの考え方や価値観を学んでいきたいと考えています。