家族とつながる

家族の諸行(因縁によって生じたこの世の一切の事) 「父の場合」#5

半年後、新年早々の冬休み中だった。今度は、ニューメキシコシティで、父とガルシアと出会った。ホテルのバーに居るという。そこでは、キューバを除く、中南米の人々が集まり、父を加えて、鳩首会談をしていた。米国中心の人達は別の所、欧州の人達は、更に別になっていた。この頃は、種々のことが複雑に対立し、なかなか纏まらない集団だった。私を、中南米のグループは仲間が増えたと歓迎してくれた。

いよいよ、翌日に総会を控え、票読みの作戦会議中だ。やがて、バーに米国代表が顔を出した。父の方に向かって、ウィンクをし、去った。こちらは固まったという意味だ。欧州勢が最後までわからなかった。当日総会で、裏取引が判明。イタリアが副会長案を示され、欧州勢がキューバ側に付いたことが分かった。結論として、キューバが会長(一期4年)、ガルシアが第一副会長(次期会長)、イタリアが第二副会長で、決まった。ガルシアが挟み撃ちされる構図が残った。

一方、目を転じて、日本国内も、アマチュア内で、高校、大学、社会人それぞれに、ドンがいる。それに加えて、プロも全く考え方の異なる別物だった。何事につけ反目し合う。それを一つの目標に向けて、纏めていくことは、並大抵のことではない。
それに加えて、野球をしない国々に、野球を普及させることも、オリンピック委員会側から課せられた。気の遠く成る様な道のりだった。

話は、十年前の我が家に戻る。

父の養母は、孫との同居が適わぬまま、この世を去った。母は、只々、自分の母親が原因であるが為、平身低頭お詫びするしかない。
この時から、父親が家に帰る日が、それまで以上に少なくなった。本気で根本的リセットを考えたようだ。母と離縁をし、私と兄を分ける。父と私。母と兄だ。兄はことごとく父に対し反抗的だった。我が家が分断する直前だった。

既に、父は別に住まいを構えていた様だ。女の子も生まれた。父が我が家に帰ってくると、夜遅く、声を潜めて、鋭く言葉を交わしているのが、時折、聞こえた。それでも、母は子供達に、何事も無かったかのようにしていた。お陰様で兄弟は、心穏やかに学校生活を満喫していた。

それが破られたのは、私が高校入学の為に戸籍を取った時だ。知らない女の子の名前が有る。意味が解らなかった。それを、認知された子だと解説して聞かせたのは、祖母だ。その晩は、母の顔を見るのが辛く、遅く帰った。その内に又、変化が起こった。この女の子の母親が、急逝した。何かがその様な事を計らったとしか思えないような展開だった。

母が、信仰している教団より頂いた「選名」と、その人の本名が、同じだった。同名の女性が二人、父と共にいる様な状態だった。
母も体調を崩し、数か月間、寝たり起きたりを繰り返していた。それでも意を決した様に、お山に登り、寒行に朝早くから家を出ていった。そして、母はここを乗り越え、選ばれたかのように復活した。命を削る様な、大変な山場だった。

女の子が残った。暫くの間、母親の親族の家に引き取られ、従妹と共に育てられた。また次の変化が起きた。引き取られた先の当主が、難病の為、入院した。ここで母が、「自分の水子の一人が帰ってくる」と、引き取ることを決心する。何の為の信心かと、暫く自問自答しての苦渋の判断だった様だ。先方の親族へ、安心して貰うための我が家の顔として、私が選ばれた。父が私を自分の側に選んだ経緯から、兄ではなく、私の役目に成った様だ。

自ら与り知らないことで、難儀な役目が回ってきた。実際に応用問題の連続だった。父は、最初妹の祖父母に会う場面のみ居た。その後は、忙しいとのことで、妹の叔父さんが、色々な人の所に引き回し役をした。何をどう言えばいいのか、二十歳前の私には荷が重すぎた。しかし、後にして思えば、その様な難儀な場面は、その後の会社人生で何度も訪れた。第一回目の試練だったが、何回か受け止めきれない反応に佇む場面があった。

妹は我が家で順調に育った。しかし、学校で友達が直ぐに出来ない分、近所中に入り浸った。自分なりの理解で、何故自分が我が家に登場したかを話して回った。その為もあったが、又一方で、気学で何十年かに一度の吉方が有ることを、母が知った。移転の決断は早かった。父が、海外に行っていて、不在の間だ。了承を得た上で、一人で、転居先の決定から、住んでいる家の売却、金銭交渉まで、一人で取り仕切った。この移転から、我が家の運気の風向きが変わってきた様だった。

次回は、若きヒーロー、ガルシアの運命に急展開が起こる話です。

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イチゾウ

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団塊世代、重厚長大産業出身、第二の人生真っ只中。

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