少し前のことになりますが、「縁とも」のお一人、小宮位之さんの講演を聴いてきました。
小宮さんは無料塾「八王子つばめ塾」を立ち上げ運営されています。八王子つばめ塾は、経済的に苦しい家庭の中高生に対し、無料学習支援を行っています。 2012年に任意団体として設立され、2013年10月からはNPO法人として活動しているそうです。現在は講師が70名、生徒90名、教室6カ所で運営されており、講師はすべてボランティアで成り立っているとのことでした。また、生徒の半分は「母子家庭」、もう半分が「共働き家庭で、子どもが3人以上」だそうです。
みなさんは「相対的貧困」という言葉をご存じですか?相対的貧困をざっくりと定義すると世帯年収の中央値427万円の半分=213万円(月額17.8万円)以下で暮らす世帯を指します。特にひとり親家庭の相対的貧困率は54.6%と非常に高くなっています。厚生労働省によると、相対的貧困世帯で育つこどもの貧困率は13.9%(2017年6月)で、ほぼ7人に1人が貧困状態にある計算になります。子どもの貧困によって塾に通えない、進学できないなどの教育格差が生じてしまうことが社会問題となっています。
小宮さんは講演の中で「なぜ無料塾が必要なのか?」について語っています。
「今、都立高校の倍率は1.42倍です。これは142人が受験し42人が落ちるということです。実は相当倍率が高いんです。相対的貧困家庭では授業料が安い公立高校を目指しますが、相当勉強しないと入れません。現在の中学3年生の通塾率7割くらい。子ども達はみんなが塾に行っているのに自分が通わないと公立高校に入れないと思っています。ところが塾って、毎月2万円〜3万円かかる。貧困家庭ではこのお金が出せない。先生も忙しすぎて公立中学では生徒をフォローすることもできない。そういう子ども達のために無料塾が必要なんです。」
つばめ塾の入塾資格は3つ。1,家庭が経済的に苦しいと感じていること 2,他の有料塾、家庭教師に習っていないこと 3.勉学の意欲があること。これを満たしていればほとんどの子ども達を受け入れているそうです。
つばめ塾の理念は「現実に生徒の学力を上げてあげて、世の中を立て直したい。世の中を立て直すとは、自分さえよければいい、お金さえあればいいという考え方を捨てて、いつか自分も人に役に立てるような人間になりたいという青少年を育てること」。ボランティアで教えてくれている先生の半分はつばめ塾の理念を見て協力したいと言ってくれているそうです。
ちなみに「つばめ塾」と名付けたのは、ここで学んだ子ども達が、「つばめのように、いつかまたボランティアという巣に戻ってきて欲しい」という切なる願いからだそうで、30秒で思いついたとか…
無料塾は広がりが出ており、全国各地からつばめ塾を見学に来て始めたところも多いとのこと。なかでも座間市の「夕暮れ学級さつき」には驚かされたそうです。ここは高校生の5人組が立ち上げた無料塾です。自分たちの仲間にひとり親世帯の子どもが居て、途中まで塾に一緒に通っていたんだけど辞めてしまいました。その時に座間市の近辺には無料塾は無かったので、その子は塾に通えなかった。自分たちが高校生になって、無いのなら自分たちで作ろうと思い、公民館等の協力を得て立ち上げたそうです。
小宮さんは言います。「この子達を見ていると、貧困は社会のせいだ、とか、自己責任だとかインターネットに書いている大人に、いい年してガタガタ言ってないで出来るところから始めたらどうだ、と言いたい。そのくらいこの高校生達には感激させられました。」と…
今、運営資金は行政に頼らずすべて民間の個人、会社からの寄付金でまかなっており、大勢の人が支えてくれているそうです。地域のフードバンク等から生徒向けにお米やパンを寄付してくれたりして、つばめ塾を通して、地域の人が地域の人をお互いに助けるという形が出来てきたそうで、そんなつながりが大切だと思って活動しているそうです。
最後に小宮さんは、
「無料塾については4つの応援の方法があります。一つは先生になって教える。二つ目は事務局の運営などを手伝う。三つ目は土地や建物を貸してくれる。四つ目は運営費を寄付する。もし無料塾をやりたいという人が居たら紹介してください。この輪をもっと広げていきたいと思います。僕たちがやっているのはただ単に学力を上げるということでは無く、人と人を繋ぎ、地域の子ども達を地域で育てて行くことだと思っています。」
と結びました。
小宮さんがつばめ塾を立ち上げた時のことは「ホッと家の縁がわ」に八王子つばめ塾の卒業生に向けたことばとして掲載されていますので是非ご参照ください。
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お話しを聞いていて、小宮さんの行動力にとても感動しました。こういった活動は立ち上げることもさることながら、運営し維持していくことが本当に大変なのだと思います。自分も何かできることから協力してみたいという思いを強く持ちました。八王子つばめ塾のホームページはこちらです。何か協力したいと思われた方はぜひホームページの「無料塾に協力したい方へ」を参照してみてください。
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