娘からの電話。「今外ですか? 大丈夫ですか? 」——外での仕事が多い私をいつも気遣ってくれます。
「大丈夫、家にいますよ」。すると、電話の向こうで声をあげて泣いている。
「どうしたの? 何かあった?」。そう声をかけると、娘は一気に話し始めました。
病気を抱えながら生きてゆく彼女は結婚して13年、子供には恵まれず一匹の猫を飼っています。「レオン」と名付け、自分のことを「ママ」と呼ぶ。愛おしい〝わが子〝にどうやら一大事が起きたらしい。
「レオンが大変なの。急性腎不全。11歳だからもう覚悟しているつもりだけど、なにかあったらどうしよう!!」。
私はこう彼女に伝えました。
「貴女、お母さんでしょう! 泣いていてどうするの! 貴女がしっかりしないでどうするの!」
「そうね、わかった。頑張る、ありがとう」。そう言って、娘は電話を切りました。
その翌日、嬉しい電話。「少し落ち着いた。昨日はありがとう。人から見れば 一匹の猫のことなのに、ミーちゃんは(私のことをそう呼ぶ)私の心を大切に受け止めてくれて、本当に嬉しかった」。
もう一つ嬉しいことがあったと言って、声弾ませた娘。病院に行くために、タクシーを待っていたら配送業者の人と出会ったとのこと。
荷物を見たら彼(娘の夫)のゴルフバッグだったので不在表をお願いして病院に行き、帰宅すると、不在表に『お声をかけてくださり有難うございました。ネコちゃんお大事に』と書いてあったそうです。
嬉しくてコールセンターにお礼の電話をしたら、「わざわざお電話をくださり有難うございました。必ずその人にお伝えします。ネコちゃんお大事に」と言われたそうです。
「私はかつていじめられたりして世の中の人が怖いと思っていたけれど、人はこんなに優しく温かい、とてもありがたく嬉しく思ったの。
レオンが教えてくれたのね。ママ安心しなさい。僕がいなくなっても大丈夫。頑張って生きるんだよってね」。
娘は、この出来事を通して、いつでも相手の心を気遣える人間になってゆこうと誓ったそうです。
すべての出会いは学びの泉です。
レオン教えてくれて有難う。