昨年3月14日、102歳で母が旅立ちました。多くの人に思いを頂き幸せな人生の最後でした。今年は母のいないお正月です。
昨年のお正月、母の入所しているホームでお正月を過ごしました。おせち料理もたくさん出ていましたが、母の物は全てがミキサー食です。
蒲鉾 だて巻き 昆布巻き等、母の大好きなお雑煮まで。
「母さん、ほら、蒲鉾これは栗きんとん、これはお雑煮ですよ」とスプーンで母の口に運びながら、ふと寂しくなり何故か泣けてくる私でした。
母は口にするのですが、なかなか飲み込もうとしません。「母さん飲み込んで」何度も促すのですがうまくいかず、時間ばかりが過ぎていきました。
飲み込めないのか、飲み込もうとしないのか、口の中にためこんでいるのです。
「母さん、もういらないの? それならお口の中綺麗にしましょう」と言うと、母は口を大きく開けてくれ、口腔ケアーをさせてくれました。脳梗塞をおこし言葉が出ない母の精一杯の表現でした。職員さんにお願いして部屋に戻り、ベッドに横になった母は、何か言いたげに私を見つめています。
「なあに?何だろう。疲れた? 分かってあげられなくてごめんね」
動かなくなってしまった右手を摩りながら、<母さんの歌>をうたい二人で過ごしたお正月。これが母との最後のお正月になってしまいました。
今になれば、あの時、もっとこうしてあげられていたらと、せつなく思うこともありますが、思い出を紡ぐことができたことを喜べる自分でありたいと思っています。
ご仏前に母の好きだったお料理と日本酒をお供えさせて頂き、一緒に迎えた新年です。
二度と戻らない時間を、精一杯生き抜くことを身をもって教えてくれた母でした。
「お母さん、あなたのいないお正月はとても寂しいです。一緒に過ごしてくださいね」
遺影に伝えながら、生きていてくれるだけで良かったのだと、胸が一杯になる私でした。