ビジネスは戦争や競争に例えられることが多いんです。ビジネス用語にも戦争を語源としているものが多数あります。戦略、戦術、ターゲット、ロジスティクス(兵站)、競合他社、キャンペーン等々。何故なのでしょうか?ビジネスの常識では絶えず競争が続いています。競合先に一歩先んじることが最も重視されているからです。優勝劣敗はビジネスにとって避けて通れない道であるとみんな思っています。
戦争や競争である以上、勝ち組と負け組が出てくるのも確か。だから、勝った者は驕り高ぶり、負けた者は卑屈になったり勝った者をうらやんだりします。勝ったり負けたりで一喜一憂するビジネスの現場では心の安まるときはありません。人生の大半の時間を費やす仕事。そんな状態でホントに幸せなんでしょうか?
先日女優の黒柳徹子さんが、自身のInstagramにNHKに入社した当時の写真をアップし、こんなことをつぶやいています。
「先輩の俳優が、私たち研修生を集めて『いいか、覚えとけ。蹴落とさねえ奴は、蹴落とされるんだ』と言われました。それを、聞いて、私は、1リハ(第1リハーサル室)の壁を蹴って、泣いた。(中略)人を蹴落とさなきゃ、やれない仕事なんて絶対に嫌だ。私は、人を蹴落としたりなんかしない。」と…。
そして現在に至るまでの63年間を振り返り、「誰かを蹴落とそうなんて、思わないで、ここまで、仕事をして来れたことに、感謝しています」と締めくくっています。
(「ねとらぼ」より引用 「壁を蹴って、泣いた」 黒柳徹子、NHK入社当時の“悔し泣きエピソード”に大反響 )
こうありたいと思います。自分のことを振り返ると、やはり勝ち負けにこだわり、競合相手を蹴落とそうとする気持ちをもって、その勝負に一喜一憂してきました。まあ、あきらめはいい方で、すぐに気持ちを切り替えていましたが…
ほとけさまは言います。
「かれは、われを罵った。かれは、われを害した。かれはわれにうち勝った。かれはわれから強奪した。」という思いをいだく人には、怨みはついにやむことがない。
「かれは、われを罵った。かれは、われを害した。かれはわれにうち勝った。かれはわれから強奪した。」ということを思わない人には、ついに怨みはやむ。
実にこの世においては、怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みのやむことがない。怨みを捨ててこそやむ。これは永遠の真理である」*と…
(*中村 元著「ブッダの真理のことば」より引用)
実は時代が変わり、ビジネスは「競合」から「共創」へと変わり始めています。共同で新たな価値を創る時代に突入しました。「オープンイノベーション」と言って、企業同士が新しい技術を共有し、新たなビジネスを立ち上げることも注目されています。腹に一物「怨み」をいだいたままでは、「共創」がうまくいくはずはありません。これからは、「勝ち負けは結果にすぎない。精一杯やるだけ」と心穏やかに臨んでいきたいと思います。