約2500年前にインドに誕生した仏教は、世界三大宗教の一つで、その中で最も歴史の長い宗教です。「ほとけ」の教えと書いて仏教。「ほとけ」とは「仏陀」を指し、「目覚めた人」「悟った人」という意味です。仏教を開いた「ゴータマ・シッダールタ」は恵まれた地位を捨て、苦しみから解放されるための修行の後に悟りを得ます。仏陀とは悟りを開いた後のゴータマ・シッダールタに名付けられた尊称です。なので、ここでは「ほとけさま」ということにしましょう。
ほとけさまの教えは「この世は苦しみに満ちている」という現実の理解から始まります。私たちの人生は、「老い」や「病気」、「死」をはじめ、「愛する者との別れ」や「嫌な人との出会い」、「求めても求めても得られないこと」など、思い通りにならない現実の連続だと言えるでしょう。そうした時に生じる「思い通りにならない(ので悲しい!・嫌だ!)」という感情や感覚こそが「苦しみ」の本質なのです。ほとけさまは、この「苦しみ」から解放され、充実した人生を歩むための処方箋を示してくれた方です。
苦しみから解放されるためには、「四つの正しい理解」が必要です。まず、自分が「何の」事実に対して「どのように」苦しんでいるのかを正しく理解する。次に自分が苦しんでいる「本当の原因」について正しく理解する。さらにその原因をなくす「根本的な解決方法」を正しく理解する。あとはそれを「実行」すれば確かに解決するなと正しく理解し、行動に移すだけです。ほとけさまは、この明確な処方箋をもとに「こころ安らかで幸せに生きなさい」と教えてくれているのです。
ところが、この「正しく」がなかなかできません。自分の都合や偏見でものごとを理解することの方が多いのが常です。これでは「苦しみ」から解放されることはできません。ほとけさまの視点、ものごとをありのままに観る智慧と、相手を思いやる慈愛に満ちたまなざしを得ることで、私たちは幸せに生きることができるのだと思います。